NORTH VILLAGE/チルイン 2大巨頭時代の終焉か。迫り来る新興勢力

シーシャ好きであれば誰もが一度は訪れたことがあるであろう、NORTH VILLAGEやチルイン。いち早く店舗展開を進め、これまでの日本におけるシーシャ文化を広げてきたのは、この2社であることに疑いの余地はない。いわばシーシャの入口となっていた2ブランドだ。彼らなしでは今のシーシャ人気は生まれなかったであろうことを想像すると、頭が下がる思いである。

しかし近年、その2社に迫る勢いで成長を遂げる2社をご存じだろうか。それは、「musch」「C.STAND」である。本記事では、その新興勢力2社を店舗出店状況やお店の特徴を交えて分析していく。


※本記事は推測が多く含まれるため実際の実情と異なる部分も含まれる可能性があります。

musch(ムッシュ)とは

2021年10月にmuschブランドとして、恵比寿に1号店の「musch 恵比寿東口店」を開業した。ちなみにmuschの店名の由来は「make us chill.」インスタグラムで若い女性を中心に、落ち着いたゆったり内装と、看板メニューの大人のいちごミルクがSNSで話題となり、近年客足が伸びている。
現在は、恵比寿東口店渋谷店麻布十番店渋谷道玄坂上店恵比寿西五差路店博多大名店渋谷宮下パーク前店渋谷奥渋店池袋店muse六本木店の直営・FC含め10店舗を運営している。新規参入で約1年半(2023年5月21日現在)で10店舗展開(muse1店舗を含む)は異例のスピードである。2023年6月20日にはmuschブランド10店舗目の恵比寿西口店のOPENも予定している。さらにmuschは、姉妹ブランド「muse(ミューズ)」を発表し、2023年5月19日に muse六本木店・5月22日にmuse東銀座築地店をOPENする。ここで、muschの過去の店舗と現在公開されている出店スケジュールをまとめてみる。

こちらのデータを見て分かる通り、muschは2023年10月15日に1号店をOPENしてから、5月21日現在10店舗を開業し、公開されている近日OPENの店舗を含めるとグループ合計19店舗となる。これは現在店舗数1位のNORTH VILLAGE(27店舗)に次ぐ業界2番目の店舗数となる。1店舗平均33.9日という異例のスピードで、2年とかからずあのチルイングループ(15店舗)の店舗数を越すこととなる。

さらにこちらのURLで公開されている売り上げデータによると2023年1月時点でのグループ全体の売り上げが約3,000万円/月ということがわかる。折線グラフでは渋谷店・道玄坂上店・麻布十番店の3店舗のみだが、この数字だけでは合計売り上げが一致しないため、おそらく2023年1月時点でOPENしている恵比寿東口店・恵比寿西五差路店を含めた5店舗の合計であると推定されることから、1店舗平均約600万円/月ほどであることがわかる。また道玄坂上店・恵比寿西五差路店に関してはOPENから2ヶ月ほどの新店でのデータなので、おそらく現在はそれ以上の平均数値を推移しているのかもしれない。

出典:musch HPより(https://musch-bo.hp.peraichi.com/)2023年5月20日

musch(ムッシュ)の戦略

マーケティング

muschの顧客はシーシャを吸わないカフェ利用者まで層を広げたことにある。いわばマーケットの昇華だ。これまでの一般的にアングラなイメージを持たれがちなシーシャ屋から、昼間は明るいおしゃれカフェ、夜はムーディな夜カフェへイメージのブランディングに成功した。その中でドリンクやフードメニューに力を入れ、さらに内装のデザインにおいては、お店の象徴となる暖炉やハンモック、樹木、ルーフトップなどのICONを持っている。これらはSNSを中心としたマーケティングにおいて重要なポイントを担っている。一昔前のインフルエンサーマーケティングと昨今のインフルエンサーマーケティングの変化も重要なポイント。つい数年前まではきれいな女性が投稿すれば広まるといったことがあったのも事実だが、最近はいかに強いコンテンツを所持しているかが重要だ。その投稿の映像、写真の中のコンテンツの主人公が投稿主なのか、それともコンテンツなのか。コンテンツ有意な投稿ほどコンバージョンが高まる傾向にある。さらにはその投稿主が専門性やスタイルを持ちフォロワーの属性がすでにターゲティングされた、いわば顕在化した顧客へのリーチできるか。その他重要なポイントもたくさんあると推測するが、本記事ではこの辺りにしておく。

多店舗展開によるスピードとスケールメリット

前述の通りmuschはここ約2年以内で約20店舗近く出店を行なっている。業界初参入にしては異常なスピードなのは言うまでもないがそこには、直営とFCのバランス展開が影響している。直営で培ったノウハウやデータやブランドを元に、一気にFC展開することで、同時多発的にプロジェクトを推進することができる。これがスピードの所以だ。FCにすることで利益率は落ちるものの資本を抑えながらスピード感を持って展開できると同時に、仕入れ全体のスケールが増えることでの仕入れ単価を抑えることができ、直営自体の利益率をUPすることが可能になる。さらには統一されたブランドのUGCが大量に生成されることで、SNSユーザーがmuschの投稿を目にする機会が増え、潜在的にどこかmuschに親近感すら覚えるようになる。

今後のmuschの動向と業界での活躍が楽しみである。さらに最近店舗数を急激に伸ばしているC.STANDのデータも見てみる。

C.STANDとは

2021年7月にC.STANDブランドとして、新宿三丁目に1号店の「C.STAND新宿三丁目店」を開業した。初めてお店を訪れた人は驚くであろう、なんとソフトドリンクが60円〜、アルコールドリンクも90円〜提供されているのだ。生ビールに関しては220円で飲むことができる。シーシャはレギュラーサイズ1,800円、さらには3名までシェアチャージもかからないという安いさ。それが激安居酒屋感覚で大学生や若者を中心に、近年客足が伸びている。
現在は、川崎店新宿歌舞伎町店秋葉原店渋谷センター街店渋谷マークシティ横店池袋西口店西新宿一丁目店名古屋栄店梅田東通り商店街店ENMA 歌舞伎町店千葉店上野店川口店神田店の直営15店舗を運営している。新規参入で約2年経たずして(2023年5月21日現在)で15店舗展開はmuschに引けを取らない脅威のスピードである。2023年2月13日には15店舗目の神田店のOPENをしてから3ヶ月ほどは新店のニュースはないもののそれまでの出店スピードは異例の速さなのでこれまでの出店スケジュールをまとめてみる。

こちらのデータを見て分かる通り、C.STANDは2021年7月26日に1号店をOPENしてから、5月21日現在15店舗を開業している。これは現在店舗数1位のNORTH VILLAGE(27店舗)に次ぎチルイングループと並ぶ業界2番目の店舗数となる。それもさらに1店舗平均37.98日(※新宿三丁目店から神田店まで)という異例のスピード。

なぜそんなスピード出店が可能なのか運営母体を探ってみる。

C.STANDの母体

C.STANDの運営会社はFS.shakeという東京豊島区に本社を置く外食企業。焼き鳥や水炊きなどの鶏料理専門店の「とりいちず」の運営と、とりいちずブランドのFC本部フランチャイジーとして東京・埼玉・千葉・神奈川の関東圏を中心に約50店舗を展開している。2019年売り上げは27.8億円。コロナで外食産業が大打撃を受けたタイミングで、おそらく社長や幹部のシーシャ好きの方が、事業再構築としてコロナでも影響を受けていないシーシャを新業態として開発したのではないかと予想される。売り上げは2019年表記で止まっていることからもおそらく2020年〜2021年はコロナで辛い年になったのではないかと。その中で生き残りをかけた新業態を開発されたFS.shake社の企業努力は瞠目に値する。

ちなみに代表取締役の遠藤勇太さんは今年3月に行われた、シーシャの技術の祭典「SHISHA-1グランプリ」にもプレイヤーとして参加されていた。

それはさておき、ここで直近のFS.shake社の2020年〜2022年のHPに記載されている、新規出店ブランドをまとめてみた。

ご覧の通り、2020年にはとりいちずのみの出店に対し、2021年には全9店舗中3店舗がシーシャ業態、さらに2022年に関しては全10店舗中6店舗がシーシャ業態という力の入れ具合がわかる。2023年2月13日にOPENしたC.STAND神田店を境に約3ヶ月間シーシャの新店舗の情報がないこと、最近は「もんじゃ酒場 だしや」の出店ペースが増えていることから、一旦はシーシャ業態の出店に落ち着きを見せたのではないかと推測される。

C.STANDの戦略

マーケティング

C.STANDはソフトドリンクが60円〜、アルコールドリンクも90円〜という圧倒的な安さでポジションを築いている。これはmuschに例えるなら、シーシャを2軒目大衆居酒屋(フードはないものの)にマーケットを昇華させたといえるだろう。

C.STANDは前述の通り、これまで数々の居酒屋を運営してきたノウハウをシーシャにも存分に生かしている。逆にいうと、激戦の外食産業において当たり前であるマーケティング対策をまだ対策が十分に取られていないシーシャ業界に横展したというのが正しいだろうか。まずはSEOの対策に関してだが、エリア×シーシャのクエリに対して適切な対策が行われている。上位検索記事の上位投稿を網羅している。

次にMEOに関してだが、検索条件によって(検索履歴/距離など)左右されるものの、ここでは「新宿 シーシャ」で検索した結果がこちらである。プレゼントキャンペーンやレセプションを通じて圧倒的な口コミ数を稼いでいることが大きく影響していると思われる。その他、SEOやMEOに関してはサイテーションや被リンク、ドメインパワーなど数多く要因があるがここでは口コミのみに言及するとする。

その他Instagramの対策としては、OPENでのインフルエンサーを活用したブーストなどが大きく影響している。さらに従業員に対してインスタグラムのアカウント開設とハッシュタグ対策を行うことでリーチを伸ばしている。

規模の経済性と効率的オペレーション

C.STANDはこれまで数多くの居酒屋を運営してきたことで実現できるメリットを最大限生かしていると想像できる。まず1つ目は大量仕入れによる原価コストの最小化ではないだろうか。同じビールでも1店舗で仕入れられる量と、60店舗で仕入れられる量では差は歴然としている。グループやFC全体での仕入量がおそらく大きいC.STANDならではの他では真似できない価格帯を実現しているのはこれが故であろう。通常これまで外食の平均FLコスト50~60%で運営してきたと仮定すると、シーシャ業界では高い利益率は望まず、その分を顧客に還元する姿勢ということも垣間見える。さらにこれまでの外食の生鮮のロス率に比べて、シーシャのフレーバーがFコストと捉えた時の、Fのロス率がほぼ0というのもポイントだろう。生鮮食材を扱わないことは外食企業にとってはこんな好都合なことはない。

2つ目はFLのLの部分に関してだ。通常外食産業だと、キッチンとホールという職種があり、別々に人件費がかかる。しかしシーシャにおいてはキッチンやホールという概念はなく、シーシャも作り、ドリンクも提供し、接客も行う。シーシャのオペレーションも外食に比べ、単一のオペレーションを組むことができるのも魅力だ。通常、品目別に焼きや揚げ、カット盛り付けなどなど、例えばだし巻き卵と唐揚げではまるで別の工程が必要だ。ここでは少し乱暴な言い方にはなるが、シーシャは全てフレーバーを盛り付けて、炭を乗せて、待つだけだ。さらに仕込みという概念もない。外食企業にとってはこんな好都合なことはない。いわば仕込みが一切発生しない牛丼とでも言おうか。さらにはモバイルオーダーを用いることで、オーダーを取りに行く工数をなくすことでオペレーションを最小限に抑えている。モバイルオーダーのメリットとして、時間帯別、月間の品目別などのオーダーデータから発注の最適化を行うことができるのでキャッシュフローの最適化も行うことができるのであろう。

3つ目は出店場所とグループ全体で顧客の回遊だろう。すでに居酒屋実店舗を複数持つC.STANDはエリアの土地勘があり、かつ既存の潜在顧客を多く抱えている。居酒屋の2軒目として、グループ全体のLTVの向上を目指しているのではないかと想像がつく。例えば1軒目はとりいちずで3,500円/人で飲み食いし、2軒目でC.STANDで2,500円/人でシーシャを吸ってもらう。これまで存在しなかった2,500円/人という売り上げがグループ全体では積み上がる仕組みだ。

これからのシーシャ業界

今回は急速に展開を進める2店舗を紹介したが、個店で着々と美味しいこだわりを持ったシーシャを提供している良いお店もたくさんある。ここからは、シーシャという限られたマーケットの中で戦っていくのはおそらく天井が見えてくるだろう。そうなった場合、「シーシャ×○○」 (ex.コーヒー/ワイン/パフェ/コワーキング/メイド等※既にあるものもあるが)といったマーケットの昇華や、組み合わせをうまく活用したビジネスモデルが増えてくるであろう。
一方でエリアに根付いた地元の常連を束ねるいわばスナックのようなシーシャ屋とチェーン展開するシーシャ屋は顧客の住み分けができるためカニバルことはそう多くはないだろう。しかし同じ顧客をターゲットにする、チェーンVSチェーン、スナックVSスナックといった戦いは激化するのは間違いない。ただその中で潰れていくお店も多く発生するだろうがそういった経済における淘汰は最終的にマーケットや顧客に還元されるので合理的ともいえる。

ノースビレッジは自社で出版/不動産/リサイクル事業など手広く広げ、シーシャにおいても独自の世界観で根強いファンを多く持ち、かつECサイトの運営やグローバル展開を行なってる。一方でチルインはここ数年、店舗の撤退も増えておりC.STANDという強力なライバルが現れた今、今後の戦い方に注目が集まる。ただ再三にはなるが、2社の業界へのこれまでの貢献は賞賛に値する。チルインは社長直々のtiktok出演によるtiktok内の「シーシャ」クエリハックを狙っているようだが、今後も継続してほしいと応援している。
チルインtiktok アカウント:https://www.tiktok.com/@shisha_chillin

筆者個人的には、チルインがすべからく撤退を余儀なくされた秋葉原の地で、C.STANDが勝ち続けることができるのかが楽しみである。

さあ、始まるのか、本当のSmoking Down.


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